松本 幸市
supporter.002大崎上島町で移住定住アドバイザーをされている松本幸市さん
地元の国立広島商船高専を卒業後、船員を経て、母校の高専に技官として勤めた後、2014年から生まれ育った山間集落で移住滞在型シェアハウスを運営、現在は木江地区でゲストハウス「庭火」の代表をされながら、厳島神社の神主をされています。一般の方から見ると少し珍しい経歴と職種の松本さんは、現在大崎上島町の移住定住アドバイザーを何年もされ、数多くのIターン移住者をサポートされています。そんな松本さんがなぜ公務員を辞職された後シェアハウスの運営をされ、神主をされているのかをお伺いしました。
時代の流れを感じ思い切っての脱サラが大きな転機
松本さんは、高専の技官を辞職しようか悩んでいるときに、過疎化が進む大崎上島町内で高齢者の孤独死が増え自分が生まれ育った大崎地区の山間集落でも自分を幼少よりかわいがってくれていたおじいちゃんやおばあちゃんが老々介護の末に亡くなられる現状を目の当たりにし、若者がほぼいないこの集落の行く末を案じ、自分で何かできないものかと悩んでいたところ、たまたま田舎でカフェをやりつつ都会でシェアハウスを運営している友人がいてその様子や田舎に行ってみたいという都会の人たちが注目され始めた時代の流れを感じ、思い切って自分の生まれ育った集落に空き家を使ったシェアハウスを2014年に開設したことで、過疎化で活気が無くなりつつあった集落に島に興味を持った若い人達が集まり活気が戻った。私が話を聞く中で松本さんは多様性が求められる世の中にあってその時々にあったとても柔軟な考えで自分のできることを精一杯できる人で、常識に縛られない自分らしさを生かした人生を歩んでいるように感じた。
島は人と人とのつながりで成り立っている
島の移住定住アドバイザーをされている松本さんに、移住された方や移住を考えている方にどんなことをいつも話されているのか聞いてみた。松本さんは、ある島移住を考えている方とアドバイザーとして話をしたときに都会の人抱く田舎に対しての大きな誤解を聞いたという。それは田舎に移住したい理由を伺ったときに「周りに干渉されることなくゆっくり暮らしたい。」と言われたのです。確かにゆっくり暮らすことはできます。でも周りの人と関わりを持たずに田舎で暮らすことはまず難しいでしょう。むしろ都会以上に人と関わり合って生活していくことが何よりも楽で楽しく島暮らしを満喫するコツなのです。
確かに都会にはあまりない溝掃除や祭りなどみんなで一緒に行う地域行事がいろいろあり、それが田舎の文化で風土なのです。
昔からある郷に入っては郷に従えというのが地域に馴染み地元住民に愛されるコツです。そこに背を背けると地元住民も移住された方も住みづらい関係になり全く楽しくない島ライフになると思います。と松本さんは言う。
だから移住される前に話を伺って本当にその人が住みやすい場所が大崎上島なのかそれとも違う場所なのかを見極めるのもアドバイザーとしての私の責任なのです。この仕事をやり始めて県内外の人とのつながりができたので、その人にあった地域を紹介し、大崎上島ではなく違う土地に移住された方もいます。またその逆に大崎上島に合う価値観の方がいるのでと紹介されこの島に移住された方もいます。やはり折角移住されるならみんなが幸せな暮らしができるようにしてほしい。
また移住されて方の仕事や趣味などやりたいことができるように、地元アドバイザーとして、島のいろんな方を紹介しみんなが喜んでくれるのもこの仕事のやりがいです。過疎化で人が少なくなっていく中で、いろんなご縁を結び地元を育むことに大きな充実感があると松本さんは言われる。松本さんの話を聞いて思ったのは、過疎化で神主さんが少なくなり祭りができなくなる地元のピンチも自分が少しでも力になれるならそれが自分の御役目なのかなと神職の資格を取り神主になったこともしかり、過疎化で活気が薄らいでいく地域の中で自分ができる、自分に求められていることを汲み、人と人、人と地域を結ぶご縁をすごく大切にする素敵な松本さんが垣間見えました。