移住者インタビュー
Interview

反岡 恵美

Story.003

大学時代に起業…そして気付いたこと

福岡生まれで高校時代は日本語教員になりたい。そのために大学進学、大学時代に知り合った仲間とパンの移動販売の事業を起ち上げる。3年経過する頃にはフランチャイズ化するまでに成功した。
しかし、フランチャイズの店舗を管理する側になった恵美さんは、売り上げが上がっていない店舗からもフランチャイズ料を回収しないといけないことに違和感を持った。お金が優先の生活に幸福感は無かった。一旦今の環境から離れてみようと、福岡の地方に移住し、移住先のおじいちゃん達に田んぼでの稲作や畑を借りて野菜を作ることが今まで経験してきた中で、とても楽しかった。これをもう少し大きくできたらもっと自分も楽しくなるかもと農業を仕事にしようと思った。

農業は女性じゃ無理!

農業を仕事にすると決めた恵美さんが何を作っていこうかと思ったとき、姉がトマト好きでどうせ作るなら家族に喜んでもらえる物を作ろうとトマト農家を目指す。
しかしここで恵美さんにとって厳しいことを周囲から言われる。『女性が農業で起業するなんて無理!』と。地元の福岡県だけでなく山口県も含め数カ所の自治体や農業関係者に相談するも行く先々で女性農家の受け入れや応援をする雰囲気を感じることが全くできなかった。
そんな中初めて受け入れてくれたのが大崎上島町だった。役場の担当者も対応が丁寧で、島のことを知るために観光案内所に行ったら農家の人を紹介してくれて、「女性農家ってすごくいいじゃん!島に移住しなよ!」とすごく喜んでくれた。
一旦地元の福岡に帰ったが、2週間後には借りられる家が見つかって研修先も用意したと連絡があり、とんとん拍子に移住の話が纏まった。借家の地域の受け入れから、研修先での指導など、とにかく島の人のサポートがすごかった。
一年の研修期間では、現在も技術的にまた精神的に支えて下さる師匠と巡り合い、無事女性農家として独り立ち。また独り立ちのタイミングで、師匠からの紹介でとても立派なハウスまで破格の条件で賃借することができた。

農家として独り立ち

このハウスでトマトを作り始めて5年、トマトのできに納得できる年もできない年もあったがようやくいいトマトを作るための癖を掴むことができた。ハウス栽培でも作付けする時期を変えるだけで全然できが違う。毎年毎年変化する気候と闘いながら収穫できるまで丹念に育てる。師匠からも『自然相手だから思うように行かなくて当たり前。良いものができたらラッキーくらいに思ってないとメンタルが持たないよ。』とアドバイスされたことで気持ちを強く保っていられる。
農家として起業し5年トマトが大切で心配で仕方ない。朝起きたらハウスに行きトマトの健康状態をチェックする。野菜というものは、一日で健康状態が変化してしまうデリケートな物だから用事ででかけて帰りが夜遅くなってもハウスに行きトマトのチェックをし、毎日丹念に育み収穫できることを楽しみにしている。

大崎上島に移住して良かったですか?

もちろん!島に引っ越してきた当日から衝撃だった。引っ越しの日、父と姉が一緒に大崎上島まで引っ越しの手伝いも兼ねて同行してくれた。それを出迎えてくれたのが、借家の近所の方々だった。到着を見計らったように、何人も近所の人が集まって荷物を次から次へと運び込んでくれた。はじめはびっくりしたけど、温かく迎え入れてくれたことに家族ともどもすごくほっとした。
引っ越した翌日に地域の清掃活動があったのでその活動に参加したことで地域の人にもすぐに馴染めることができた。移住して6年、地域の人に支えられて農家を続けていくことができている。

これからの展望

これからは、農業が女性でも助け合いながら楽しくできる職業になれたらいいなと思っている
もともと恵美さんは、暮らしの中に仕事がある。そんな生活を思い描き農家になったが、いつしか「仕事以外は悪」と思うほどずっと仕事ばかりで暮らしの部分は楽しむゆとりがなく、仕事のための生活になっていた。そんな中縁あって2年前にご結婚されたことが大きな転機となった。
旦那さんは、仕事以外の時間も大事だよと島外に連れ出してくれた。今まで知らなかった広島のことや、いろんな人と出会わせてくれ、その出会いが仕事に繋がった。また花や樹々を見て四季を感じ取る時間、家族と過ごす時間、仕事以外のことを経験することで色んな価値観が生まれ、今はとても充実した人生を歩めている。
農業で上手くいかない事があっても旦那さんから「悩みがない農業ってあるのかな?常に向上心があるからこそ悩むし考えることが続くものだと思うよ。」と言われ、はっと気づき悩むことの大事さを学んだ。一人だと苦しいことも傍で見守ってくれていることで様々な好影響を恵美さんは受けることができ、旦那さんにとても感謝している。
最後に恵美さんは、今後農業の形は変わっていくと思っていて、今まで色んな自治体で言われた農業は男性しかできないとか家族経営じゃないとできない。と言われる形から、農業に対するハードルがもっと下がって誰でも挑戦でき、女性農家仲間と子育てなど助け合っていける農業ができるようにしたい。と他の仲間との共存共栄を将来構築したいと想いを語ってくれた。
様々な自治体から女性だからと受け入れられなかった苦い経験があるからこそ、女性にも誰にも挑戦しやすい農業。これがまさに恵美さんが目指した暮らしの中に仕事がある姿かたちなのである。


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