反岡 和宏
Story.002人と人とのつながり
2018年に大崎上島町に移住して、現在は大崎上島町観光協会の事務局長をしている。「地域のいいところは、何気ない日常では気づかないところにあります。もとから住んでいると中々気づけないモノを、移住者の目線から見つけていきます。」と、語る。反岡さんは、移住者という独自の目線から島で見つけた魅力を発信している。そのために、島の景色や人を取材して写真を撮っている。観光とは、自分たちが住んでいる日常と、島の外からきてくれる人から見た非日常をつなげる仕事だと考える。
「大崎上島とは観光客が毎日何万人といっぱいくればいいって話ではないと思います。観光客が何万人も来られると、島らしさっていうものがなくなってしまいます。今ある島のいいところがなくなってしまっては意味がないです。島のことを知れば知るほど、何が合って何が合わないとかがわかってきます。そういうところを大事にしたい。」
「イベントやマルシェで農業や漁業の人と会ったとき、いきいきしているなと思いました。
「島は人が少ない」「高齢化」「離島」ってワードはネガティブな響きに聞こえるかもしれない。しかし、島だから人を感じられる。だから行ってみようって思います。観光客がたくさん行くような場所は、人との関わりはあまりなく逆にモノしか見えていないかもしれない。だけど島はゆっくり人と話ができると思います」「お客さんが求めているモノを提供することはいいことだけど、それ以上にはならない。人と人とのつながりによって従来の観光とは違うものをこちらから、半歩先を提案していくのが大切だと思う。」と、観光に対するスタンスを語る。
大崎上島の魅力について、どのようにしたらその魅力を伝えることができるのかを日々勉強し、人と人とのつながりを大切に考え、観光に活かそうとしている。
島で「働く」から「暮らす」へ
移住した当初は、「島で働く」という印象だったそうだ。しかし、島の人とお話しし価値観に触れることで、島の深い魅力を見つけて「働く」から「暮らす」に意識が変わって、片足を突っ込んでいった。そのきっかけとなった出来事が、大崎上島町の秋の三大祭りの一つ、「御串山八幡神社秋祭り」である。この秋祭りに取材に行った時、反岡さんは御神輿を担がせてもらったというのだ。「普通地元で生まれ育った人しか御神輿は担げないと思っていたので島の住民として、認めてもらえたような感覚でうれしかった」と当時の心境を語る。最初にここに移住しようと思い選んだのではなくて、観光という切り口で、仕事や大事に関わらせてもらって、島に住んでいると実感が沸いた。大崎上島町に来る前までは、食事は自炊をせずにコンビニ弁当やスーパーの惣菜ばかりを食べていた。
こうした場所やものは普段住んでいたら気づけないもので、外の目線から見ている。
大崎上島との出会い
「もともと人とお話しコミュニケーションをとることが好き」と話す。「観光とかの旅先の飲み屋で、たまたま隣で飲んでいる全く知らない人と話すのを楽しんでいました。」こうした旅を通して、出会った人の考えや意見を聞いて、今の観光に対する考えまで導かれました。数年前まで反岡さんは、首都圏の企業で働いていた。あるとき、「自分のやりたいことって何だったのか」と、今までの自分を振り返った時、地域貢献に高い意欲を持つ首都圏のソーシャルな若者と広島県の中山間地域とのマッチングを図るプロジェクトである「ひろしま里山ウェーブ拡大プロジェクト(以下、里山ウェーブ)」に参加したことがきっかけで、地元広島へのUターンを決めた。そして、広島を好きになるために様々なイベントに参加して、広島県のことを生き生きと話す人と出会った。「世界ってこんなに広いのに、ちまちまやっている自分が小さく感じた。生活に直結している仕事っていいなと思いました。」そして、里山ウェーブのプロジェクトで、この島と出会ったのである。島の住民への取材、島の課題や今後のことをディスカッションしていく内、2018 年に大崎上島町観光協会の初代事務局長に誘われて、この仕事を始めたのです。
今と未来をつなぐ架け橋を作っていきたい
反岡さんは、これからも未来を想像できる写真を撮って発信、探究し続ける。「写真から、素敵な未来が見えるように見せ方を変えていきたい。そして、自分が犠牲ではなく、自分も幸せであることを大切にしながら活動していきたい。」と、語る。
反岡さんは、今と未来をつなぐ架け橋を作り「自分の理想」に向かって突き進む。