移住者インタビュー
Interview

太刀掛 千穂

Story.001

きっかけは恩師からのひとこと

「あえて橋を架けていない」という島が、広島県にある大崎上島という離島だ。
近年では、離島に橋を書けることが多くなり、利便性がよくなる一方で、島の独自性が失われ、以外にも島の過疎化につながることが多い。そんな中、大崎上島は、橋をあえて架けないことで、島の独自性を保っている。その魅力に惹かれ、移住者が増えている島である。しかし、今回紹介する太刀掛千穂さんは、その魅力に惹かれて移住したわけではない。むしろ、「橋が架かったらどれだけ便利かと、何度も思った。」という。では、なぜそんな彼女が大崎上島に移住したのか?きっかけは恩師のひとことであった。
太刀掛さんは、大崎上島に移住して3年目になる。出身は広島県東広島市。現在は、一週間の半分を大崎上島で、もう半分を広島市の飲食店で働きながら過ごす、二拠点生活をしている。
大学卒業後は、服に興味あったことからアパレル関係に就職した。しかし、お店のスタイルに合わず、わずか一週間ほどで、退職する決断をする。退職したことを、大学の先生に伝えると、偶然にも「大崎上島の人から、地域コーディネーターの仕事を募集している話があるからやってみたら?」といわれた。大学時代に、瀬戸内海の島でツアーを考えるイベントを経験したこともあり、面白そうと感じ、大崎上島への就職を決めた。恩師のひとことがきっかけとなり、大崎上島に関わることになった。

はじめはなかなかなじめず…

ただ、やはりはじめて離島に一人で生活することは簡単ではなかった。仕事や近所付き合いで島の人と関わる機会はあったので知り合いは増えた。
しかし、すでに島民の中に出来ているコミュニティーの中に入るのは、移住したてで、部外者のような気持だった彼女には、難しいことであった。島のイベントにも必要最低限しか参加しなかった。だから、島内に気軽に話せる仲のいい友達はいなかった。そんなこともあり、彼女にとって島は「働くためだけの場所」であり、「癒しの場所、落ち着ける場所」ではなかったのだ。

島で頑張る同世代の移住者と出会い

島にすんでからは、比較的年齢層の高い方に会うことが多く、なかなか気軽に話をすることが難しかった。別に嫌いなわけでもなく、嫌がらせを受けたわけでもない。ただ、気を使わなければならない、そんなことの繰り返しで彼女は疲れてしまったのだろう。
ただ、日々NPOの仕事をしていく中で、同世代の島で頑張っている移住者に触れ合う機会が増えた。
特に共通点はなく、出身地も違うし、仕事も違う。皆さん、初めてお会いする方ばかりだ。強いて共通点があるとすれば、「島に移住したこと」と「同世代である」だけだ。ただ、それだけでも当時の彼女にとっては心強く、深い共感を持ったのだろう。
今では、同世代のメンバーと女子会を開くなど、気軽にそして色んなことを話せる関係を築けているようだ。
島に移住して、中々コミュニティーに入れず、孤独だった彼女を救ったのは、同性代の移住者との出会いだったのかもしれない。

二拠点生活をしてでも実現したい夢

日々仕事をしていく中で、彼女はあることに気が付いた。それは、農業が盛んな島ということもあり、彼女の周りには農家が多いのだ。おいしいものを作るために、毎日が真剣勝負で、一つ一つの農作物を繊細に手入れしている農家の姿は彼女にとってとても魅力的だったのだろう。そんな農家さんと農作物をみて、いつか「島の食材を使って料理を提供する店を持ちたい」と思うようになった。
実は彼女が二拠点生活をしている理由は、まさにこの店を持ちたいという夢をかなえるためなのだ。週の半分は広島市内の居酒屋でアルバイトをしながら料理の勉強をしている。このお店は、お酒の作り方から料理の完成度、お店の雰囲気などまさに彼女が理想とする姿に限りなく近いとのことだ。食材の質が良ければ料理はおいしくなる。料理人の腕の質が高ければ、料理は何倍にもおいしくなる可能性を秘めている。私も食べたことがあるのだが、大崎上島の農作物の質は非常に高い。彼女が料理の腕を高めて、島の食材を使って料理した時、どれだけのものが出来るのだろうか。
彼女は今日も二拠点生活というハードな生活をしながら、料理の腕を高めている。
すべては、「島で見つけた夢」を実現するために。


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